附属天文台・准教授 浅井歩

 
 
 

太陽では、太陽面爆発(太陽フレア)と呼ばれる太陽系内最大規模の爆発現象がしばしば起きている。電波からX線・ガンマ線に至る幅広い波長帯で、強烈な増光が見られるのに加え、コロナプラズマや磁場の宇宙空間への噴出など、ダイナミックな様相を呈する。私自身、太陽観測の動画を見てその荒々しい姿に驚き、それがきっかけとなって研究するまでに至った。今では、大規模な太陽フレアが起きると、(不謹慎だが)ワクワクしてしまう。

 

宇宙空間への高速プラズマ噴出は、その前面で衝撃波を形成し高エネルギー粒子を加速するなど、地球を含む太陽周辺の環境を激しくかき乱している。太陽フレアが引き起こすこれらの「宇宙環境の乱れ」は、地球上の天気になぞらえて、「宇宙天気(Space Weather)」と呼ばれ、監視や予報が世界中でなされている。というのも、極めて大きな宇宙天気擾乱が地球周辺で生じると(「磁気嵐」、「宇宙嵐」などと呼ばれることもある)、人工衛星の故障や通信障害が起きる他、大規模停電やパイプラインの腐食など、現代社会は宇宙環境に深く依存しているために、私たちにも甚大な影響が及ぶことがあるからだ。宇宙空間が必須の社会インフラとなるにつれ、宇宙天気はますます重要になっている。

 

天文台では、宇宙天気の擾乱源としての太陽フレアや噴出現象、太陽周辺での衝撃波などの発生機構の解明のため、観測・数値計算の両面から研究を推進している。個人的な興味に導かれて取り組んだ太陽フレアであるが、今では地球や社会とのつながりを感じながら研究を推進している。